え、こだまの世界?

A day in the life of...

精神の健康について

精神の健康と言えば、シンガーのこの一文をよく思い出す。

私の同僚の何人かは、高い給料をもらう成功した学者だったが、なんと年間所得の四分の一を分析医[カウンセラー]への支払いにまわしていた。私の見た限り、この人たちは分析医の世話になっていない人と比べて特別何か困っているわけではなかったし、それこそ精神分析のやっかいになっている点をのぞいては、オックスフォードやメルボルンの友人たちとどこも変わらなかった。私はどうしてそんなことをするのか友人の何人かに尋ねてみた。彼らが言うには、自分は抑圧を感じているからだとか、心理的緊張を解消することができないからだとか、人生を無意味に感じるからだとかいうことだった。私としては、彼らをつかんで揺すってやりたかった。この人たちは、知的で才能があって裕福で、世界で一番刺激的な街[ニューヨーク]に住んでいたのである。(…)有能で裕福なこうしたニューヨーカーが、分析医の椅子からおり、少しの間でも自分だけの問題を考えるのをやめたとしよう。代わりにバングラデッシュやエチオピア、地下鉄に乗っていく駅か北に行ったマンハッタンだっていい、とにかくそういうところに出かけていって、そこの人たちが抱える本当の問題をなんとかしようとするなら、きっと自分の問題などすっかり忘れてしまうだろうし、おそらく世界ももっといい場所にできることだろう。

ピーター・シンガー『わたしたちはどう生きるべきか』

人生は短い。自分のことについて悩むより、世界を良くすることに時間を使うべきだろう。

善い人間の在り方如何について論ずるのはもういい加減で切上げて善い人間になったらどうだ。

マルクス・アウレリウス『自省録』