え、こだまの世界?

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応用倫理学を学びたいひとのためにα

  1. 応用倫理学とは?
    • 現代社会の問題に倫理学的にアプローチするものです
    • 単に現代社会の問題について論じるだけでは応用倫理学になりません
    • 倫理学的なアプローチについて論じ出すと大変なので、ここでは論じません
    • 論文を読んだり先輩の発表を聞いたりしながら自分なりに考えましょう (気になる方は下記の文献案内を参考にしてください。初学者はあまり深入りする必要はありません)
    • 生命倫理環境倫理、情報倫理、企業倫理、スポーツ倫理などの分野が先人によって切り開かれてきました
    • まったく新しい領域を切り開くことは学部生には難しいです
    • 過去に論じられているテーマから発展的に考えるのがよいでしょう
  2. 文献を検索する
    • 先行研究を調べましょう
    • 先人をリスペクトしましょう。学部生が考えるようなことは、誰かがすでに論文にしているものです
    • CiNiiやOPACなど、文献データベースの使い方を覚えましょう
    • 現代社会において文献検索の能力はとても重要です。学部生のうちに図書館でやっている講習会に一度は出ましょう
    • 文献データベースで調べてたくさん文献が出てきた場合は、一覧を作り、先輩などにどの文献がとくに重要か尋ねてみましょう
    • 現代社会学部学生のための文献調査ガイド (「京女」を「京大」と読み替えてください)
  3. 発表する前には人に相談する
    • 事前に人に見せないでいきなり本番に入ると危険です
    • 音楽でも演劇でも、本番の舞台に立つ前には十分に準備するものです
    • 先輩、同学年、後輩、家族、誰でもいいから話を聞いてもらいましょう
    • このプロセスがとても大切です。これができない人は大成しません
    • できるだけ早くに人に見せることが大切です*1
  4. 論文を書くときの注意
    • 論文は新書のような本とは書き方がまったく違うので、本や評論や天声人語を参考にしてはいけません
    • 良い論文を書くには、良い論文を読んで真似しましょう
    • 背景、論文の目的、本文、結論など、形式を大事にしましょう
    • 先行研究をきちんとまとめるのも一つの重要な能力です
    • 先行研究の問題点を見つけてそれをきちんと批判するのはまた別の能力です
  5. 応用倫理学を学びたいひとのための文献案内*2

応用倫理学のすすめ (丸善ライブラリー)

応用倫理学のすすめ (丸善ライブラリー)

日本の応用倫理学の出発点。自由主義社会における倫理規範はどのようなものかというのが基本的な問題枠組み。
応用倫理学入門―正しい合意形成の仕方

応用倫理学入門―正しい合意形成の仕方

加藤尚武先生には他にもいろいろ応用倫理学についての本があるが、本書は応用倫理学の方法論について論じているので重要。
応用倫理学事典

応用倫理学事典

事典は大切なのでできれば一度は手に取ること。「「応用倫理学とは、どういう原理を応用したものなのですか」と聞かれることがあるが、「特定の原理を適用した倫理学の領域ではない」というのが真相である。ともかく実際の生活で登場してきた問題を取り上げて倫理基準を作ったり、倫理学的に分析したりする領域を、「応用倫理学」と呼んでいる」(加藤尚武「刊行にあたって」より)第7章の高橋久一郎先生の論文「「応用倫理学とは何なのか」と問う必要があるのだろうか」参照。
岩波 応用倫理学講義〈7〉問い

岩波 応用倫理学講義〈7〉問い

やはり高橋久一郎先生が「応用倫理学問題地図」というのを作成している。本書については次も参照。書評:応用倫理学講義 (品川哲彦先生)
倫理学という構え―応用倫理学原論

倫理学という構え―応用倫理学原論

第二章第一節「現代社会における倫理問題群」、第五章第三節「応用倫理学を再起動させる」を参照。
倫理空間への問い――応用倫理学から世界を見る――

倫理空間への問い――応用倫理学から世界を見る――

序章「応用倫理学とはなにか」を参照。
倫理問題に回答する――応用倫理学の現場――

倫理問題に回答する――応用倫理学の現場――

第10章「倫理問題をどう解決するか」を参照。
応用哲学を学ぶ人のために

応用哲学を学ぶ人のために

神崎宣次「応用倫理学は問題を解決しないといけないのか」を参照。
実践の倫理

実践の倫理

実際に応用倫理学している本の代表例。安楽死、胎児や動物の道徳的地位、人口問題、環境倫理など。

*1:「論文は、水虫や痔などのタチの悪い病気と似ていて、なかなか人に見せにくい。だから、〆切ギリギリに人に見せに行くと、たいていの場合、『なんでこんなになるまで相談にこなかったのか』とか、『残念ながらすでに手遅れです』とか、『残念ながらすでにお亡くなりになってます』とかいうことになります。早期に発見していれば簡単に治療できていた誤りも、〆切まぎわまでほっておくと論文のいたるところに広がっているために、とりかえしのつかないことになっていることがしばしばです。そこで肝心なのは、たとえ恥ずかしくても早目早目に人に見てもらうことだと言えます」---『リンリー教授講演集』より

*2:なお、日本の応用倫理学の発祥地(の一つ)は千葉大学というのが通説です。以下のインタビュー記事を参照のこと。ここに出てくる千葉大資料集というのは、日本の応用倫理学の歴史を語る上で不可欠のアイテムです。「日本における生命倫理学の成立と展開――加藤尚武・飯田亘之・坂井昭宏先生へのインタビュー――