え、こだまの世界?

A day in the life of...?

近接因と究極因 (よくわかる社会心理学)

さらに続き。ちょっと飛ばして。

よくわかる社会心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

よくわかる社会心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

進化心理学の発想を理解するためには、近接因と究極因の区別を理解しておく必要がある。従来の人間科学・社会科学は、主に近接因に着目してきた。これは、研究対象となる心理や行動を生み出す直近の近接要因や心理現象を指す。一方、進化心理学が解明を目指す究極因とは、そもそもなぜ特定の心理・行動現象が存在しているのか、それはより多くの遺伝子を残していく上でいったいどのように役立ってきたのか、という究極的な原因のことである。(202頁)

これは重要な区別だ。一階の説明と二階の説明。これがごっちゃになっていると、すべての人間の行動は「自分の利益のために」なされるということになってしまう。近接因についてはもうちょっと区別を立てる必要がありそうだ。

たとえば、ある人が怒っている場面を見て、「なぜ怒っているのか」という原因を考えるとする。近接因的説明では、「誰かに騙されて自尊心が傷つけられたから」とか「騙されたので、怒りを生み出す特定の脳内部位が働いたから」などが答えとなる。一方、究極因的説明では、「古代環境においては、誰かに騙されたときに、怒って相手に報復したり、それを暗示する行動(怒り表情の表出など)をしたりすることが、相手から再び騙されることを防ぐ機能を持っていたから(よって人間は生得的に、騙されたときに怒るものなのだ)」ということになる(202頁)

あと、一階と二階で思い出したが、これがブラックバーンとかマッキーの投影説で問題になったり(そういえば、いつかそういう話をどこかに書いたような)、ヘアの二層理論で問題になったりする。一階と二階の区別をすると、つねにこのようなseepingが起きる可能性が指摘されるようだ。