- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/01/10
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もう一回、蓮実重彦のコメント。
博士論文を書くときには、すでに世界と喧嘩できる自分を作り上げておくという強い意志が、学生にも教師にもなければいけません。
しかし、「大学院重点化」はそういった強い意志をサポートするものではなかった。本来、博士というのはその時点で世界と対等に争うことができる人たちのことですけれども、世界的な研究成果と無縁に資格として与えられる「医学博士」に代表される伝統を引き継いでしまったんじゃないか、という気がします。世界と争うことができない人たちに大量に博士号を与えてしまいました。(28頁)
がんばります。
さらに困ったことに、この人たちをうまく処遇できていない。日本の学生は、博士課程に行くと自分は研究者になれると思い込んでしまい、研究者になれないことは「挫折」を意味するんですが、他国では事情が随分違っています。(…)
残念ながら日本の大学には、また社会でも、研究者ではない博士号の持ち主を遇するにふさわしい給与体系がない。日本でも、博士が能力を活かせる新しい道を作らなければいけないと思います。(28-9頁)
これは難しい。仮に、「専門分野以外では、社会の役に立たない人間を作る」というのが現在の大学院のやっていることだとすれば、博士号を取った人を企業などが雇うことは絶望的だ。逆に、企業が博士号取得者を積極的に雇ってくれるシステムがあれば、優秀な人が大学院に進むだろう。なるほど、そうすると博士号取得者に対するアファーマティブアクションが必要になるのかな。
The world don't need scholars as much as I thought...
(`Twentysomething' by Jamie Cullum)