え、こだまの世界?

A day in the life of...?

届いた本 (希望格差社会、新平等社会)

ネットで注文した古本。

希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く

希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く

高校生のときに読んでたら、迷わず社会学を目指してたな。おもしろい。もっと早くに読んでおくべきだった。

大学院博士課程修了者は、日本全国で毎年一万人以上いる。しかし、毎年、新たに発生する大学の教員や研究所の常勤研究員のポスト数は3000人程度であり、大学倒産時代を迎えていることもあり、今後、増える見込みはない。特段に優秀な人は修了と同時に常勤教員となって年収500万円程度の収入を得られるが、そうでない人は、非常勤教師をしても年収100万円程度しか稼げない。有期の特別研究員などになっても年収200万円程度で、将来の保証もない。彼らは、能力を磨いて教育研究職に就くチャンスを待っている。それでも、一生大学の教員になれない博士課程修了者が毎年7000千人以上出現する計算になる。/・・・大学院や大学卒業者は、職のレベルを落とせば、定職はみつかるかもしれない。現実に、地方公務員の「高卒」程度の募集に、大学卒業者が殺到しているという。/しかし、教育投資してきた「期待値」があるので、なかなかレベルを落とした就職に踏み切れないのだ。また、同期同学歴で、学歴相当の職に就いている友人がいると、レベルを落とすことはプライドが許さない。更に、いつかはなれるかもしれないという「夢」を諦めきれないという事情があるので、学歴ごとの二極化は今後とも不可避的に進行する。(120-1頁)

これらや他の職業・家族・教育における格差の現実が、人々の意識における格差、つまり「希望格差」を生み出している点が今日の日本社会の問題だと論じている。

このような状況は、ただ単に、経済生活が不安定になり、将来の予測がつかなくなる人が増えるという外面的な問題を発生させるだけではない。人々の心理や意識といった内面的なものにも大きな影響を及ぼす。(188頁)

二極化とは、単に生活状況の格差拡大なのではなく、努力が報われるかどうかという「希望の二極化」なのである。(203頁)

正社員とフリーターでは、単なる収入格差以外に、将来の生活の見通しにおける「確実さ」に格差がでてくる。さらに、そうした差のある両者の間には、仕事や人生に対する意欲の有無など「社会意識」の差、つまり、心理的格差が現れる。これが希望格差である。現代の人間にとっては、この希望格差が、実は最も重要なのだ。(52-3頁)

新平等社会―「希望格差」を超えて

新平等社会―「希望格差」を超えて

この本では、上の本の最終章で述べられた処方箋について詳しく論じている。具体的には、ロールズやセンの議論を踏まえて、hope egalitarianismとでも言える正義論を提唱している。

「努力が報われる」ことをすべての年齢、立場の人に保証していくことが、持続可能な社会を作り出す条件であり、社会の責務だと考えている。(82頁)

もっとも、主観的な「希望」の充足を問題にすると、功利主義に向けられる従来の批判がこれに対しても向けられるように思われるが、いずれにせよ独自の主張を展開していておもしろい。