え、こだまの世界?

A day in the life of...?

2. 論文の体裁について

  1. 論文の書き方について自覚的になろう:先輩の論文も参考にして、見よう見まねで論文を書いたところ、何となく字数は埋まったが、まとまりに欠ける論文になってしまった--。こういう経験は誰にでもあることです。よい論文にするには、以下のような論文の体裁(形式)について自覚的になり、内容を推敲していく必要があります。
  2. 「はじめに」の書き方:よく逆三角形の図が示されるように、一般的な話題から入って、どんどん話を絞っていって、最終的に論文で取り扱うテーマ(目的)を述べるとよいでしょう。できの悪い論文の典型は、テーマが広すぎて論文が進むにつれ収拾がつかなくなるというものです。なるべく狭めにテーマを設定するのがコツと言えるでしょう。テーマ設定は難しいので、先生とよく相談しましょう。なお、研究手法が複数ある分野では手法についても述べましょう。また、「はじめに」で結論を先に述べる人もいます。こうしておくと、「はじめに」の部分が論文全体の要約になっているため、要約も一緒に提出が求められている場合に便利です。
  3. 「まとめ」の書き方:「まとめ」は「はじめに」で設定した目的や問いに、どのように答えたのかを簡潔に書く部分です。論文によって明らかとなった新たな課題や残された課題があれば、それについても述べておくとよいでしょう。「まとめ」では論文全体の見直す作業をすることになりますが、くれぐれも反省文や泣き言は書かないようにしましょう。
  4. 本文は構造化しよう:2万字の卒論で第10章まであるのは変です。また、わたしの友人は段落を一度も変えずに卒論を書き上げてしまいましたが、それもまた変です*1。小さな川が集まって少し大きな川となり、それがまた集まってさらに大きな川となるように、文-段落-節-章という構造を意識しましょう。このあたりは分野による慣習もあるので、先輩の卒論を参考にすることが大切です。
  5. 目次を作ろう:卒論生の中には目次を付けてこない人もいます。絶対に必要なわけではないですが、自分で論文の全体像を眺めるためにも、ぜひ目次を作ってみましょう。本文を書く前に目次を作ると、本文を完成させるために何を調べる必要があるかとか、制限枚数に対してテーマが大きすぎるとかいったことがわかるかもしれません。また、一通り書き終えてから目次を眺めると、徹夜で書いた部分に全く脈絡がないことがわかったり、前後の節や章を入れ替えることで筋道が通ることに気付いたりするものです。査読する先生にとっても、目次があると何を書いてあるかが一目でわかるので助かります。
  6. 最後に一言。「型」を身に付けよう:どんな分野でも、その分野の「型」というのがあるものです。卒論は、その内容もさることながら、論文を書くことによってその分野の型、つまり方法論を学ぶことが大事です。ここでいう方法論とは、たとえば文献研究であれば、どうやって文献を調べて、どのように読解するか、といったことです。「ともかくも、事物の真理を探ねるのに、方法なしでやるくらいなら、それを全く企てない方が遥かにましなのである。というのは、そういう無秩序な研究や不明瞭な省察によって自然的光明が曇らされ精神が盲にされるにきまっているからである。」とデカルト先生もおっしゃっています(『精神指導の規則』岩波文庫23頁)。自分が知りたい問いについて、どういう手法を用いて研究し、どういう形式で提示すればよいのか、ということを意識しながら卒論を書き進めるとよいでしょう。そうすれば、卒論を書いたあとに残るものがあるはずです。

*1:就職して立派に働いています。