え、こだまの世界?

A day in the life of...?

記憶力について

大学受験のときはがんばっていろいろ覚えたが、記憶力は良くない方だと思う。記憶術もぜんぜん練習しなかった。そういえば、某名誉教授は年号とか覚えていてすごいが、あれは記憶術を使っているのかな。

記憶力というのは、コンピュータで言えばハードディスクに当たるものだろう。文字の発明、印刷術の普及、コンピュータやオンラインデータベースの普及で、どんどん記憶という能力の価値は格下げしていっているようだ。

本はいつごろから作られたか 大発見(4) (大発見) (集英社文庫)

本はいつごろから作られたか 大発見(4) (大発見) (集英社文庫)

プラトンの伝えるところでは、ソクラテスパイドロスとの対話で、文字を発明したとされるエジプト神話のトトが、自分の発明によってどんな結果がもたらされるかという点で判断を誤ったいきさつを語っている。そのためにトトは、当時のエジプト王だったタモス神からこう叱責された。

「おまえがこんなものを見つけだしたばかりに、学ぶ者の心は忘れやすくなってしまうだろう。記憶力を使わなくなるからだ。弟子たちは外に書かれた文字に頼って、自分で覚えようとしなくなるぞ。おまえのこの特異な発見は、思い出そうとするときには役立っても、記憶の助けにはならないし、弟子たちに伝わるのは真実ではなく、まがいものの真実だ。弟子たちは、いろいろなことを耳にしても、何ひとつ学んだことにはならない。博識に見えて、そのじつ、たいがいは何も知るまい。そんな者たちとつきあったら退屈だろうよ。見かけは賢そうでも、中身は空っぽだから」(146-7)

今後重要になる能力は、博識ではなく、検索能力とか推論能力とか想像力とかだろう。CPU? とはいえ、一見いろいろな無関係な事柄を結びつける作業をするには、記憶力が必要か。いや、そういうのもコンピュータが代理してくれるようになるのかな。そうすると、どういう能力を持った人間が評価されるのかな。やっぱりコミュニケーション能力というところに落ち着くのか。