え、こだまの世界?

A day in the life of...?

借りた本 (よくわかる社会心理学)

よくわかる社会心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

よくわかる社会心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

おもしろい。学部生のときに読んでいたら社会心理学を専攻した気がする。以下、抜き書き。

  • 公正世界仮説(just world hypothesis):私たちは、自分の住む世界が、よい人にはよいことが、悪い人には悪いことが起きる公正な世界であるという信念(公正世界信念)を持っているという仮説。この信念に従い、悪いことが起きた被害者には、その被害を引き起こす何かがあると考え、被害者に責任を求める。(15頁)
  • 素朴な現実主義(naive realism):自分たちの解釈が「真実」であり、相手側もそれが分かっているはずだと考える傾向。(18頁)
  • 認知的倹約家:人間は、西洋の研究者たちが想定していたほどには、常に合理的、熟慮的に問題解決を行うわけではなく、一部の情報を無視したり、十分考慮しなかったりする。そのような「施行の手抜き」をする背景として、「人は労力のかかる認知的作業をできるだけ避けて、認知的負担の少ない情報処理過程をとるのだ」という(Fiske & Taylor)。(34頁)
  • 認知的不協和理論:認知間の不協和の存在は心理的に不快であり、その不協和を低減、または回避するように動機づけられているということ。たとえば、煙草が健康に悪いと知りながらも吸い続けている人は不協和の状態にある(それゆえ、たとえば「煙草は精神的には良い」といった論説を積極的に信じたりする)。(37-38頁)
  • ステレオタイプ脅威:能力に対する偏見があるなかでテストを受ける場面のように、否定的ステレオタイプを自分の特徴として確証してしまうリスクを負うとき、その人物が感じる不快感。このような不快感は、課題遂行を妨害するなどの否定的な影響を及ぼす。(61頁)
  • セルフ・ハンディキャッピング:自己評価に関わる大事な行動に成功できるかどうか不安なとき、わざと自分に不利な行動をとったり不利な条件を付けたりして、あらかじめいいわけを作っておくこと。たとえば、「昨日テレビを見すぎて勉強できなかった」とテストの前に言い訳するなど。(68頁)
  • 透明性の錯覚:自分の心が他人から見透かされているような感覚。(72頁)

経済学の主要な理論と同様、社会的交換理論は、「人は基本的に利己主義者であり、自己利益を最大化しようと動機づけられている」との基本的前提をおく。しかし人は同時に、他者から援助を受けたときには、返報によって交換バランス状態を取り戻すようにも動機づけられている。社会学者のグールドナーによれば、多くの社会には、(1)自分を助けてくれた人を助けなければならない、(2)自分を助けてくれた人を傷つけてはならない、という返報性規範(norm of reciprocity)があるという(Gouldner, 1960)。(79頁)

人はそもそもなぜ他者を助けるのか。この問いに対しては、さまざまな立場からの回答が提案されてきた。まず、援助行動は人の純粋に他者を思いやる心、すなわち愛他心に基づくものだとの主張がある(愛他心仮説)。(…)
一方、こうした援助行動の原因を、あくまでも援助者の自己利益的な関心に基づいた利己心によるものと解釈する立場もある(自己利益仮説)。それによれば、人は、他者を援助することにともなって生じる損失と、逆にそこから得ることのできる利益を秤にかけ、利益が多い限りにおいて援助をすることになる。(…)
では、援助行動の説明としては、純粋な愛他心仮説と自己利益仮説のいずれがより適切だろうか。実はこの問いに答えるのは難しい。なぜなら、特に罪悪感の軽減や自己評価の向上といった内的な利益については、人がそれを本当に考慮しているのか否かを厳密な形で証明することが困難だからである。ある人の援助行動が、純粋な愛他心に基づくものなのか、それとも実は心の奥底に隠されている打算的な期待に基づくものなのかを完全に分離するのは難しい。(83頁)

おもしろいなあ。このあたりの実証研究は脳科学の進展に期待しよう。

自分がこの分野で実証研究するんだったら、原因帰属とか責任帰属についてやってみたい。なんか、精神の健康のためには、このあたりの研究が進んで、人びとに基礎知識としてもっと広まる必要がある気がするんだが。

続きはまた明日。