続編も読み直す。
- 作者: 暉峻淑子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/05/20
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 4回
- この商品を含むブログ (10件) を見る
四章まではとくに理論的な話もなく散漫な感じを受けた(朝日新聞を延々と読んでいる気になった)が、五章と終章は上の本では十分に展開されていなかった処方箋が論じられていておもしろい。処方箋は、資本主義と社会主義の適正な組み合わせという「第三の道」的な発想ではなく(競争は基本的にダメらしい)、市民的連帯とか市民的公共性とかに求められるようだ。もっと根本的には、人間社会の本質を「グローバルな競争社会」ではなく、「助け合う互助と互恵の社会」と考える「地道で新しい発想の転換」が必要なようだ。
助け合ってきた人間社会の領域、つまり市民的公共性に光をあてることによって、「人間社会とはもともとそういう社会だったのか」と再発見することがたくさんあるような気がする。過労死するほど働いて利潤を争い、失業者やホームレスを出し、子どもを不幸にし、地球温暖化も戦争も止められない。そんな世界に別れを告げ、安心の中から人間の自由な創意が発揮され、福祉をもたらす技術や産業がうまれていく。それが豊かな社会の条件ではないだろうか。(240頁)
おもしろいのだが、互助を主張することが十分な処方箋と言えるかどうか。発想の転換は必要だが、十分多くの人々が発想の転換をするためには、どうしたらいいのか。市民運動が答えなんだろうか。まあ、そんなに簡単に具体的な処方箋が見つかるわけはないのだが…。
『平等ゲーム』と同様、この本でもロールズが出てこず、競争社会か平等社会かという話になっている気がするが、やっぱりロールズの正義論って日本では基礎知識じゃないんだよな。