The Difficulty of Tolerance: Essays in Political Philosophy
- 作者: T. M. Scanlon
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2003/06/26
- メディア: ペーパーバック
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ちょっとまじめに勉強しよう。
para 1. 道徳哲学の議論では、各人の利益と負担を比較するための基準がよく問題になる。功利主義だけでなく、ロールズ主義でもそう。
para 2. 本論文では、社会制度を批判したり正当化したりする際の基準となるwell-being(福祉、厚生、幸福)の測り方について論じる。Well-beingの基準が最低限持つべき特徴は、次のもの。
- その基準の使用にコンセンサスが得られていること
- 各人のtasteやinterestの多様性を考慮に入れていること (→多元性の事実というやつだ)
- result-orientedであること、すなわち単にgoodsのランキングを行うだけでなく、それらのgoodsによって(tasteやニーズや健康や社会的地位に関して多様性を持つ)各人のwell-beingが実際にどのように影響を受けるかまで評価したものであること
para 3. 明示的に論じられるwell-being基準で有名なのは、主観的な基準。これは、ある状況における個人のwell-beingは、当人のtastesやinterestsによって決まるというもの。快楽主義的功利主義や、厚生経済学者の「新功利主義」(ハルサーニ)などがこれにあたる。ハルサーニについては奥野さんの本を参照(と書いてはいないが)。(→健康科学で用いられる「主観的QOL」もこの方向の考え方だ)
para 4. 主観的基準を上の三つの条件に照らすと。第一に、個人のtasteを尊重している点でよい。各人のpreferenceをそのまま各人のwell-beingと考えるよりは、事実誤認や一貫性という仕方で修正が入るのが普通であるが、いずれにせよ、各人のpreferenceが個人のwell-beingを測る究極の尺度になる。
para 5. 第二に、主観的基準は各人のニーズの多様性を考慮しているという意味でresult-oriented。コンセンサスについてはそれほど明瞭ではないが、社会制度や政策の評価において各人の判断が等しい重みを与えられるような基準だということで、コンセンサスが得られそうである。
para 6. 最後に、以上に加えて、preferenceがwell-beingの尺度として理論的な至高性primacyを持っているように思われる。他のwell-being基準は、その代用というか、二次的基準として扱われる傾向がある。
あれ、もう行かなきゃ。続きはあとで。