- 作者: 最相葉月
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/03
- メディア: 単行本
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SF作家になる以前の歴史的な話(こういう戦争体験もあるのか、とか)と、50年代後半から60年代のSF創成期のところまでがおもしろかった。70年代以降、1001篇を目指す時代と、その後は読むのが少しつらかった。書き方の問題なのか、生涯自体が辛い(=「痛い」)ものとなったのか。とはいえ、娯楽性と芸術性なら娯楽性を優先すると公言しつつ、生涯文学賞を得られずに芸術性を認められなかったことを苦にしていたという後半の話は、文学者の普遍的なテーマとして興味深かった。
このぐらいの本になると、索引を付けてほしいところ。
[荒正人は]日本のSFはまだ根を下ろしておらず、海外作品の翻訳時代で「推理小説でいえば大正時代の半ば頃」の貧しさであることを嘆いたあと、・・・「星新一の義務と責任は、大正時代の中ごろ、探偵小説を定着させることに成功した江戸川乱歩に似ている」が、星新一のショートショートのような変格SFやSF漫画、映画、テレビばかりが流行し、本格SFが一向に流行らないようでは、SFは定着しないだろう、と批判した。321頁