え、こだまの世界?

A day in the life of...?

星新一 一〇〇一話をつくった人

星新一 一〇〇一話をつくった人

私は人生について深く考へる事は余り好きでない。我々の生きている事について、何故とか、何のためとか考へた事はない。そのような事はなるべくそつとしておくことにしている。深く考へることに自分の性格が堪へられるかどうかが恐ろしいのである。・・・
我々若い時代の者は将来一流の人物になれる様な気がばくぜんとしている。併しよくよく考へてみると我々は何の実に於て万人に優れた才能を持つているのだろう。確然たる論拠なに一つなくして而も将来に対して途方もない希望を持つている人生の一時期を青年時代と称するのであろう(・・・)。(116-7頁)

以上は星新一の大学時代に、中学以来の親友が自殺し、その一周忌に編まれた追悼文集に星が寄せた文章から。前半部は、彼の作品の多くに見られる「軽さ」(実存してなさ)が、意図的であることを示唆しているようだ。
後半部は、先日別の文脈で同じ事を考えていたのだが(クラッシュの映画だったかな)、一歩踏み込んで考えると、なぜ青春時代には「将来一流の人物になれる様な気がばくぜんとしている」んだろうか。やはり星が続けて言うように、「社会の波にもまれ、自己の才能の限界を知らされ」ていないからだろうか。しかし、まだこれでは十分な説明になっていない気がする。『ニューロマンサー』(話はすっかり忘れたが)のモリイが言う「若いうちって、自分だけ特別だと思うじゃない……」は、その通りだと思うのだが、いったいなぜそのような現象があるのか。まあそのうち考えることにしよう。