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事例でまなぶケアの倫理―看護共通技法 (G supple)

事例でまなぶケアの倫理―看護共通技法 (G supple)

  1. 読みやすい。看護学生向けにとてもわかりやすく書いてある。ビジネス書もそうだが、もっとこのようにわかりやすく書くよう、研究者は心がけるべきだ。
  2. 編集の仕方がよい。テーマごとに、ケース、キーワード、歴史、最近の問題、関係者の声、ディスカッション、関連問題を1頁程度で要領よくまとめており、この編集の仕方はたいへん参考になる。
  3. プロローグにおける理論の解説とそれ以降の章のつながりが不明確。「四原則は自己決定を重視しすぎで、かつ個々のケースに適用するのが困難。それゆえ、理論と個別の患者を結びつけるのがケア(他者に応答し続ける態度)」というのがプロローグにおける主張だと思われるが、それがそれ以降の章にどう効いているのかわからない。プロローグ以降、「原則」「ケア」という語はほとんど(まったく?)出てこない。全体の統一性が高いだけに、「ケア」に関して一本筋を通してほしかった。
  4. それと関連して、「ケアの倫理」という書名。おそらくこの「ケア」は、医療と対比されるときの「ケア(看護、介護)」。したがって書名は「看護(師、者)の倫理」とほぼ同義と思われるが、この「ケア」は、プロローグ3の説明における「ケアの倫理」と似てはいるが同じ意味ではない(プロローグを読むかぎり、「ケアの倫理」=「看護の倫理」ではないと思われる)。この内容でこの書名は、どう考えてもミスリーディング。なぜこの書名なのか、「はじめに」に書いてもらいたかった。
  5. 国試対策との兼ね合いが難しい。関連問題が国試の過去問(?)から出されているが、本書の内容とほとんど関係ない(倫理的問題をほとんど扱っていない)のが、いかにも苦しい。
  6. と、いろいろ書いてきたが、やはり全体的には大変よくできている。読みやすいというのが最もよい。興味のあるところをどこからでもぱらぱらと読める。すばらしい。同僚の某氏は早速非常勤先の来年度のテキストに指定すると言っていた。生命倫理をやる人は必携。