え、こだまの世界?

A day in the life of...?

国際政治哲学

国際政治哲学 (Nakanishiya Companions to Social Science)

国際政治哲学 (Nakanishiya Companions to Social Science)

編者よりいただく。感謝。「国際政治哲学」という新しい切り口からのテキスト。従来の政治哲学と隣接しているが領域の異なる人間の安全保障論やデモクラティック・ピース論、〈帝国〉論などが扱われていて斬新。近代日本の国際政治論や国際法思想入門というのが含まれているのもよい。こういうプチ学際なテキストが生まれるのは素晴しいと思う。文献案内も気がきいていてよい。

その一方で、これからの課題だと思うが、一読した限りでは全体を通底する問題意識や概念枠組みが見えないため、オムニバス的な雰囲気を免れない。たとえば加藤尚武が『環境倫理のすすめ』でとりあえず環境倫理の原則というのを立てたり、生命倫理学についても同じようなことをしたりしたような、そういう概念枠組みを立てられると、ある学問領域の確立にとってはよいと思うが、言うが易しで多様な現象や言説に一つの見通しを立てるのはとても難しいだろうと思う。「政治哲学」とは何なのか、グローバル化した社会で「政治」の現象がますます広がっていく中で、どういう問題設定で取り組むべきか、自分でも真面目に考えないといけない。