お坊さんや牧師のように説教するのは倫理学者の仕事ではない。倫理学者(道徳哲学者)は何をなすべきかについて合理的に考える方法を教え、また、混乱した仕方で考えないように教える。
「何をなすべきかについて合理的に考える方法を教えられるということは、自分もそれを知っているということでしょう」
「そういうことになるね」
「じゃあ、その知識を用いて、終末期の問題とか、代理出産の問題とか、何をなすべきかわれわれに示すこともできるんでしょう」
「いや、どっちかというと、正しい結論を導き出すよりも、間違った推論を指摘する方が得意なんだけど…」
「何よそれ。この役立たず」