え、こだまの世界?

A day in the life of...?

女工哀史

女工哀史 (岩波文庫 青 135-1)

女工哀史 (岩波文庫 青 135-1)

大正末期に紡績工場で働く女性労働者の実態を描写した書物。たいへん勉強になった。ただ、以下のような社会主義的な結論に落ち着いているのは、時代的制約かもしれないが、安易だ。

しからばこの労働を一体どうしたらいいか? それには唯だ一つの道として「義務労働」があるのみだ。すなわち健康な一人前の人間にして「働かざるものは食うべからず、着るべからず」ちょうモットオの許に、各人が義務服役をなすのである。ここにおいて現在の工場組織は根本的な改造を施されて、当然「工場国有」が実現するであろう。そうして時の政府はこの衣服を作るための義務労働を一般結婚前の婦人に強制するのだ。(…)
そうしてその他の男子の労働も皆こんな風になって来たら、芸術を職業にする者もなくなるだろうし、学問の研究などは銘々の趣味でこれをやるようになり、学校の先生や記者や寄稿家は労働の傍ら無報酬でこれをやろうと申し出るだろう。(…) かくして理想社会が築かれるのである。万人が皆な生きるために労働し、遊んでいて喰う穀潰しの住まわぬ真に美しい労働の共和国が出来る。万人倶に苦しみ、また万人倶に楽しむ。これぞ地上に築きあげし空想ならぬ天国であり極楽浄土である。ああ!その時の太陽はいかばかり輝かしい光を放ち、人生は楽しく、万物は麗わしくあることか? いま太陽の光りは濁っている。(400-1頁)

あと、工場で使われている言葉の説明にある「デモクラ」がおもしろかった。

デモクラ−−デモクラシーより来る語であるが解釈は民主主義と違い不平という程の意(あいつ−−起しとる) (352頁)