- 作者: 庄司薫
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1995/11
- メディア: 文庫
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青春小説なので、すでに青春を脱したものとしては今ひとつのめりこめなかったが、10代独特の孤独感、万能感と無力感、厭世観がうまく出ている(とくに後半)。真剣に生きようとしている自分と、無目的に生きているように見える世間の人々(「大衆」)にズレを感じ、何でもいいからとにかく普通の生き方以外の別の生き方を選ぼうとする。こういうのが青春っぽい。
しかし、それから? それからどうなって、今の状態になるのか。結局、初対面の人と距離感がうまくつかめないのと同様、自分と世間との距離感も、しばらく付き合っているとわかるようになる、ということだろうか。
とかなんとか考えた。個人的な体験から言えば、自分と世間との付き合い方もさることながら、自分自身との付き合い方にもかなり苦労した気がする。しかし、考えがまとまらないので続きはいずれ。
たとえばぼくは二年生の時、ぼくが特に好きな下の兄貴に、悪名高い[東大]法学部は要するに何をやってるのかときいたことがあるけれど、彼はちょっと考えたあとで、「なんでもそうだが、要するにみんなを幸福にするにはどうしたらいいのかを考えてるんだよ。全員がとは言わないが。」とえらく真面目に答えたものだ。(36頁)
「医学部もそうでーす」
そうなのだ。この人たちは要するに誰のことでもない自分のこと、自分のささやかな幸福やそのささやかな利益のことだけを考えて生きているのだ。ぼくがおかしな長靴をはいて足に怪我して歩いていようと、そんなことはかまいはしないのだ。誰も人のことなどほんとうに考えはしない、ましてやみんなを幸福にするにはどうしたらいいかなんて、いやそんなことを真面目に考える人間が世の中にいることさえ考えてもみないのだ。そしてそれは恐らくはごく当り前の自然のことなのだ。(165頁)
こういう大衆観、気持ちはわかるけど本当なんだろうか。ちょっとカッコに入れとこう。