- 作者: H.T.エンゲルハート,H.ヨナス,加藤尚武,飯田亘之
- 出版社/メーカー: 東海大学出版会
- 発売日: 1988/05/01
- メディア: 単行本
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ちゃんと読んでおかないとまずいと思い、翻訳を読み返してみたが、よくわからないので原文に当たる。すると、この論文の訳もけっこう省略が多くて、よくわからないことに気づく。あいにく今回はネチネチとやる時間がないので、気づいたことだけ以下にメモする。
元の論文の構成は、以下。
- Why a Theory of Health-Care Needs?
- A Preliminary Objection
- Needs and Preferences (Not All Preferences are Created Equal; Needs and Species-Typical Functioning)
- Health-Care Needs (Disease and Health; Disease and Opportunity)
- Toward A Distributive Theory (Satisfaction and Narrower Measures of Well-Being; Extending Rawls' Theory to Health Care)
- Worries and Qualifications
- Applications (Access; Resource Allocation)
翻訳では、第4節から第6節までがほぼ全訳されている*1。翻訳と原文を見るとかなり正確に訳されているのに、内容がよくわからないのは、第3節のニーズと選好の話が省略されているからだろう。また、この第3節でニーズ概念が選好と区別され、ニーズは主観的なものでなく、客観的なものだと述べてあるのに、翻訳ではほぼ一貫してニーズを「要求」と訳しているのも、全体をわかりにくくしている一因の気がする(タイトルは「ヘルスケアの要求と配分的正義」)。第3節をカットするという編集上の判断は、ある程度は理解できるものの、かなり苦しい。どうしても切らなければいけないとしたら、むしろ第4節の前半を切るべきだったかもしれない。
*1:ただし、第5節のexpensive tastesの重要な議論は省略されている。