老人が何か変なことを書いているなあと思って、『「世界」主要論文選』にある「平和をつくる」(小田実、1966年)を読んでみる。大阪で戦争体験。東大文学部。フルブライトで米国留学。そしてべ平連とすごい人生なんだな。文章も自分の言葉で書かれており、かっこいい。個人原理、「人民の安保」という視点もかっこいい。問題は、小田実は老人になっても熱いが、この時代の情熱がなぜ40年後まで続いていないのかということだ。
- 作者: 『世界』主要論文選編集委員会
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1995/10/06
- メディア: 単行本
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林健太郎氏は最近の「『戦後』の意味」と題した一文のなかで、「『戦後』文学者の良心を支えたものに丸山氏のばら色の政治学があったとすれば、今やそれに代って高坂正堯氏や永井陽之助氏のドライな科学的政治学が登場した。『戦後』は本当に終ったのである」(『自由』八月号)と述べているのだが、彼の言い方を借りれば、そうした「ドライな科学的政治学」の本場のアメリカのそれは、ウェットなヴェトナムの現実のまえでは、急速に説得力を失ないつつあるように見える。ことに、若い世代の眼にはそんなふうに見え、彼らの眼をヴェトナム戦争の原理的な本質にまでむけさせるのだ。478-9頁
とかいう文章。ドライ、ウェットというレトリックがうまくて、それだけでなんだか説得させられそうになる。ドライ=現実主義、ウェット=理想主義という対応関係のようだ。岩波知識人の本流?