え、こだまの世界?

A day in the life of...

『あなたが救える命』

本日(6月20日ごろ)出版なので紹介しておきます。

あなたが救える命: 世界の貧困を終わらせるために今すぐできること

あなたが救える命: 世界の貧困を終わらせるために今すぐできること

飢餓救済は哲学者のピーター・シンガーが1972年に「飢饉、豊かさ、道徳」という有名な論文を書いて以降、彼が扱ってきた重要なテーマの一つであり、本書の中でシンガー自身が説明しているように、1999年にNew York Timesの日曜版に"The Singer Solution to World Poverty"を書いて大きな反響があったのをきっかけに、一般読者向けにこの本が書かれました。長い間この問題について考えてきただけあって、国際援助に関するさまざまな疑問や批判が検討されており、読みごたえのある内容になっています。国際援助は2000年代以降大きく発展しているにも拘らず、そのことが十分に理解されておらず、また誤解も多い分野なので、「けっ、寄付なんか誰がするかよ」と思っている人もぜひ一読してみることをお勧めします。

なお、本訳書の出版は予定よりだいぶ遅れました。翻訳の話が決まったのは『マンガで学ぶ生命倫理』と同じころ(2011年初頭)だったので、すでに3年以上。言い訳をしても始まりませんが、決して遊んでいたわけではないのです。訳者解説にも少し書きましたが、翻訳を始めてすぐに震災があり、次に出産と子育てが続き、さらには大学の異動もあったので、翻訳は難航しました。子どもの世話をしなければならない休日はまったく使いものにならないため、平日の勤務時間中に、別の大学に勤める妻の石川涼子とGoogleのハングアウトを使って少しずつ進めて行きました。二人の協力関係はだいたい次の動画のようなものでした。

まあ、とにかく大変でしたが、無事に出版できてよかったです。なお、ハードカバー版とペーパーバック版で若干語句の修正などがあったため、基本的にペーパーバックを底本に使っています。

誤字・脱字については、以下の通りです。ご指摘ありがとうございます。

  • 10ページの9行目 「平気寿命」は「平均寿命」に
  • 213ページの終わりから8行目「推定2億万ドル」は「推定2億ドル」に
  • viiページの13行目 「五歳以下」は「五歳未満」に
  • 12ページの7行目 「何百億ドル」は「何百万ドル」に
  • 12ページの9-10行目 「2000億ドル」は「2000万ドル」に
  • 13ページの終わりから2行目 「31億リットル」は「310億リットル」に
  • 209ページの終わりから8行目 「100億ドル近く」は「100万ドル近く」に
  • 44ページの図1のギリシャの「0.18」は「0.17」に

追記:『あなたが救える命』の正誤表勁草書房がアップしてくれました。現時点(24/Dec/2014)では上記と同一内容です。

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以下、日本で寄付を考えるうえで参考になる本やウェブサイトを挙げておきます。随時更新したいと思います。なお、シンガー全般についてはこちらのページも御参照ください。

シンガーのTEDトーク。TEDのサイトで見ると日本語字幕も付けられるので、とりあえず見てみるとよい。

シンガーの本から始まったプロジェクトThe Life You Can Save。寄付や、寄付の誓いができる。以下の「3分でわかるThe Life You Can Save」という動画もある。

シンガーが2005年のタイム誌最も影響力のある100名のうちの一人に選ばれた件はこちら

貧困の根絶についてのボノのTEDトークもお勧め。

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序やあとがきに出てくる五歳未満児の死亡数の最新情報については、日本ユニセフ協会のサイトを見るか、より詳しくはChild Mortality Estimatesのサイト(英語)を参照。

寄付白書2013

寄付白書2013

本書第3章に出てくる米国のGiving USAに対応する寄付白書。寄付の実態を知るのに有用。この寄付白書を発行している日本ファンドレイジング協会のサイト

訳者解説では日本にGiveWell(第6章参照)に対応するものはないと書いたが、この本では寄付先をどうやって決めるかについて解説がある(第8章参照)。

第4章の公平性の話に関連して、動物における共感と公平性に関するドヴァールのTEDトーク

第4章のお金と疎外の話に関連して(本書には引用されていないが)、お金が人の行動や社会に与える影響に関するPaul PiffのTEDトーク

第6章に出てくる、the Poverty Action Labを設立し、援助の効果を検証しているエスター・デュフロのTEDトーク

第7章に出てくるミレニアムヴィレッジ(ミレニアムプロミス)のウェブサイト。日本ではミレニアムプロミスジャパンというNPO団体がある。

第9章に出てくるミレニアム開発目標についてはUNDPのサイトが参考になる。2015年の年末が期限。

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ジョージ・ハリソンが企画したコンサートフォーバングラデシュ40周年記念のフィルムクリップ。シンガーが1972年に「飢饉、富裕、道徳」を書いた時代の雰囲気が少し見て取れる。