え、こだまの世界?

A day in the life of...

パターナリズムと危害原理、自己利益と援助

Observation. 先日の某先生の講義で、ヘルメット着用義務や禁煙運動などの公衆衛生活動が、あからさまなパターナリズムによって正当化されるのではなく、他者への間接・直接の危害によって正当化される傾向があり、不誠実だという話があった。

それとは別の文脈だが、たとえば今日の朝日の社説で、ODA国益につながるからケチらずに積極的にやるべきだという話がある。他国の援助は「困った人を助ける」という理由から正当化されるのではなく、「困った人を助けると、自分たちのためになる」という自己利益から正当化されている。

一般に、われわれは、他人の行動の自由を制約する際には、「それは他人の危害となるからダメ」という他者危害の理由を持ち出し、他人にある行動を勧める際には、「それは結局のところあなたの利益になりますよ」という自己利益という理由を持ち出す。一方、「それはあなたのためにならないからダメ」というパターナリズム、「それは他人の利益になる」という慈善は、他人の行為を制約したり強制したりするよい理由ではないと考えられている。つまり、他者危害と自己利益はgood reasonだが、自己危害と他者利益はgood reasonでない。